著者:岸見一郎・古賀史建 (ダイヤモンド社 2013/12)
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自己啓発と言えば外せない一冊
それが「アドラー心理学」について
本書はそんなアドラー心理学をある青年と哲学者の対話という形式で紹介しています。
心理学と聞いてまず頭に浮かぶのがフロイト[Sigmund Freud]
いわゆるフロイト心理学とは
「意識は氷山の一角」に代表されるように人間の行動は、自分で意識的に行っているように思えて、実はそれを超越した「無意識」によって決定されている。というものです。
つまりいわゆるトラウマとはこころの傷であり、それが根幹にあるからこそヒステリーやパニックといった人間性にも影響を及ぼすというもの
これをわかりやすく言うと
過去のでき事、例えば事故にあった、虐待を受けたなどの記憶が現在の性格や精神病に表面化している、という考え方です。
これは私たちでもなんとなく理解できることでしょう。
昔失敗したからやりたくない といった感情に似ています。
これに対してアドラー心理学は、ある人間がヒステリーやパニックといった精神症状を起こしたいという欲求があり、その理由付けとして過去の事故や虐待経験を持ち出しているという考え方です。
これだとフロイト心理学と比較してわかりづらく、あまりピンと来ません。しかしアドラー心理学では
すべての悩みは対人関係の悩みである
という言葉からも分かる通り、まず対人関係の悩みがある、その言い訳のために別の悩みを作り出し、その理由付けをする。
これが人間だと述べているのです。
やはりわかりづらいですね。
これを先ほどの例を用いて説明すると
まずヒステリー起こす人はこう思うはずです。
「私が結婚できなかったり、友人が少ないのはヒステリーといった精神病があるからだ」
つまり自分に友達が少ないことや、結婚できない理由として「ヒステリーである自分」を必要としてる自分がいる。
そんなもう一人の自分が「ヒステリー」を作り出し、その理由として「過去の虐待」を持ち出す。
そして「私が結婚できなかったり、友人が少ないのは過去に虐待を受けたせいでヒステリーといった精神病になっているからだ」
と自分を納得させるためだと
そしてそれは対人関係に限らず、肉体的な障害、仕事、ライフスタイル、すべてにおいて人は対人関係の悩みを持ち、それの理由付けに他の悩みを用いているといった具合です。
もちろんこれが全く正しいというつもりはありません。
しかし心理学の世界ではすでに「トラウマ理論」は否定され始めていますし、実際にこの例えを聞いてなんとなく怖くなった人もいると思います。
実はわかっているようで最も分かりづらい「自分」という「他人」を理解するきっかけを与えてくれる。
そして対人関係が実はたいしたことでなく、悩みなどくだらないと教えてくれる本書は、「悩み」に悩むすべての人におすすめです。