思わず笑顔になる快作ファンタジー「太陽の塔」 感想

 自堕落な大学生活っていいと思いませんか?

 

学生だった人もこれから学生になる人も笑える

そんな私も大好きな大学生の青春生活を描いたのは本書

 

 

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔

著者:森見登美彦 (新潮文庫 2006/6)

 

読了までの時間:約2時間

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ストーカーを認めないストーカー大学生の物語

 

いきなり強烈なファンタジーと思えない見出しですが、本書はそうとしか言いようのない内容となっています。

主人公は京都大学5回生で自主休学中の「私」

その「私」が3回生のころに出会った女性「水尾さん」のことを研究と称して観察し記録する話となっています。

 

これだけだととても面白いと思えないですが、ここにライバルで同じく「水尾さん」のストーカーである「遠藤」

その「遠藤」との闘いや「水尾さん」の観察方法を提案する悪友「飾磨(しかま)」

といった個性的すぎる登場人物

 

あらゆることを客観的事実として淡々と述べる主人公の語り方と合わせて、思わず笑ってしまう、いわゆる「まじめにバカする」内容となっています

 

 

思わず笑ってしまう「遠藤」との闘いの日々

 

あくまで「水尾さん」の観察はスパイスであって(もちろんそれもかなりおもしろい)

私個人として本書で最も面白いのは「遠藤」との争いの日々を含む、カップルへの憎悪を象徴した行動の数々

 

ゴキブリキューブを送り付ける

・送り付けたキューブを送り付けられる

・一晩をゴキブリと共にすることハメになりかける

・クリスマスイブのカップルがいちゃつく雰囲気をつぶすために「ええじゃないか騒動」を起こす

 

など、いちいち行動力のあるバカでとにかくおもしろい

しかも「以前あいつにされたから」「仕返しだから」とエスカレートしながらも、ギリギリ犯罪にならないようなラインをついた絶妙の嫌がらせの数々はマネしたくなるものばかり

 

 

他作品との関わりも

 

恐らく作中では明言されていなかったと思いますが、作者の次作である「四畳半神話大系」にて行われる「自虐的代理代理戦争」の元になったと考えられます。

舞台が同じ大学で、住んでいるのもたしか似たような場所だったと思います。

 

 そんなダメ大学生の自堕落で、でも必死におもしろい日々

 

実は本書は、私が本を読み始めるきっかけのきっかけになった本です

そのあたりの話はまたどこかで…

 

ぜひ本が苦手という人、現代文のせいで「小説」に偏見のある人に読んで欲しい

 そんな一冊になっています。

 

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)